ときどき、手に入りにくい酒をいただくことがある。以前にもここでレアなテキーラを紹介したが、それをいただいたのと同じ人から先日、名前は聞いて知っているのだけど一度もお目にかかったことのなかったスコッチをいただいた。
「The Speyside(ザ・スペイサイド)」という、スコットランドはグラスゴー在、1895年創業の老舗ディスティラー製のシングル・ハイランド・モルト・スコッチ。少し能書きを垂れてみると、スコッチには、製法で大別してシングル・モルトとブレンデッド・モルトという2種類ある。シングルは読んで字のごとく単一の原酒の樽から汲み出されて瓶詰めされたピュアな味わいのもの、ブレンデッドというのはいくつかの熟成具合の異なる樽や小麦以外の蒸留酒の原酒から、「ブレンダー」と呼ばれる味覚の達人によってさらに昇華された味わいになるようブレンドされたものだ。また、原料となるモルト(小麦)の産地によっても、呼称が区別される。高地産のものをハイランド・モルト、低地産のものをローランド・モルト、というような具合になる。
それでこの「The Speyside」。スコットランドの銘川、スペイ川の名を冠した蒸留所で作られた高地産小麦のブレンドされていないスコッチということになるのだけど(スペイサイドという名ではあるものの、スペイサイド・モルトではなくハイランド・モルトになる)、このスペイ川、というのにボクらフライフィッシングをする釣り人は激しく心を動かされるのである。というのも、このスペイ川はフライフィッシングの聖地のひとつでもあるからなのだ。
スペイ川は、スコットランド地方特有の、典型的なハイバンク(土手の高い)で深みと蛇行の多い川で、通常のフライキャスティングが難しいことからこの川での釣りに独特のキャスト法が古くから編み出されており、「スペイ・キャスト」と命名されて今や世界中のサーモン・フィッシャーのキャスティングの必須項目となっていたりする。また、ボクの好きなBarbour(バブアー)という英国王室御用達のアウターウェア・ブランドにも、この川でウェーディングする(川に浸かる)ために、「スペイ・ジャケット」という超ショート丈のフィッシングジャケットが発売されていたりもする。そんな由緒正しき、酒飲みのフライフィッシャーは必ず敬意を払わなくてはいけない川、その名前を冠する酒がこのスコッチなのだ。
飲り方は、シングルモルトは基本的にストレートである。フラスコという錫製のポケットボトルに入れて、釣り場で釣りの合間におもむろにごくごく飲る、というのが正しいスタイルである。自宅や街のバーで飲むときにはさすがにそういう飲み方はお薦めできないけれど、でもソーダやましては水でダバダバと薄めてしまうなんて、以ての外である。どうしても薄めるならせいぜい&アイス、つまりオン・ザ・ロック。量は1オンス・シングルなんてケチなことを言ってないで、せめて2オンス・ダブルで飲っていただきたいものである。
故・開高健が、自身のフィッシング・ドキュメント「河は眠らない」の中で、川の畔のキャンピングテーブルに座り、「グレン・ガリオッホ」(ゲール語本来の発音は「グレン・ギリー」となるらしいのだが、センセイはこう言ってた)というこれまたレアなスコッチのボトルを目の前に置いて、ひとくさりスコッチについて講釈を垂れた後、やにわにボトルの栓を抜いてラッパ飲み。これがまた「ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ、ゴキュ、グビッ、グビッ、グビッ、グビッ」とおそろしく長い時間大きな音をたてて飲む。ようやくボトルから口を離して、しばらく据わった目を宙に泳がせてから、ひと言。
「ぷっはあぁ〜〜〜〜〜〜〜〜」
・・・さすがセンセイ、スコッチの飲み方を心得てらっしゃる、てなもんだ。(笑
さあて、と。
今日は週末だ。
ちょっと飲りますか・・・
